講座への参加者に「基礎の確認を!」、と基礎力の徹底した確認を要請しているなかでの質問の一例です。
What hope is there for those who want to challenge the way the biomedical research is done, when to do so they must stand in the way of the research imperative,...
上記の英文について「質問」がありました。
以下の英文でwhen to do soにハイライトマーキングされており、「どのように訳せばいいのでしょうか」というものでした。「訳し方」を聞かれると実際頭を抱えてしまうことがほとんどです。この部分だけ切り出して訳せば「そうすべきとき」とか「いつそうしたらいいのか」ということになるでしょう。しかし、この「訳し方」はこの英文についてはまったく意味がありません。
つまり、そもそもこのwhenは疑問(副)詞ではないからです。それなのになぜこの質問者は「訳し方」を聞いてきたのでしょうか。想像するに「疑問詞+to不定詞」という形(構文)にあてはめたのでしょう。自分の知っていると思っている単語の訳、また熟語と言われる動詞句、群動詞、動詞+前置詞についても覚えた訳を当てはめて、意味がとれないといって、「なぜだ!?」といっていくる人と同じで、文章に即した読みをしていないのです。単語などについて、自分の知っている「訳」で文の意味が出てこないときは知っている「訳」が役に立っていないと思うべきです。自分の知識の曖昧さ、不十分さをしっかり認識して、その知識を捨てて、文章の流れから意味を類推すべきなのです。文法・語法の知識も同じです。
さて、when to do soですが、ここでまず問題はwhenでしょう。ですから、質問はwhenに焦点を当てたものであるべきです。問詞+to不定詞という「構文」で「分析」してしまうから迷路に迷い込んでしまうのです。
whenの使い方は基本的には3つ:
1.疑問詞 この場合は特殊疑問文(疑問詞の部分を問う疑問文)としてつかうか、後に不定詞をとって文中の名詞句もしくは節を形成する(付加疑問文などで)。
2.関係副詞
3.接続詞 ~する(した)時
質問者は1に決めつけてしまっているわけです。
しかし、単独の特殊疑問文であるなら以下が疑問文の語順になっているか、疑問詞+to不定詞(orS+V)であれば、文章で「名詞」となるので主部か目的語の要素になっていなければなりません。主語だと動詞はどれか、目的語だとどの動詞の行為の対象になっているのか?あとは、同格の名詞句or節か。
不明な場合はこの程度の検討は必要です。文にすると長々書き並べなくてはなりませんが、こういう作業になれていれば一瞬です。意味が出てこなければすぐにこの案を捨てる!
2.関係副詞は関係詞ですから先行詞があるか関係副詞に含まれている(先行詞が省略されている)。しかし、ここはカンマがあるので省略しない。つまり連続用法の関係副詞になるわけで、カンマの前に時を表す副詞の要素が必要です。あるでしょうか?
3.接続詞。~するとき、~したとき、ということであとに文が続きます。when ~ingの場合はS+Vの省略です。
ここでは、to do soを括弧に括れば(修飾語句として)、they must stand ...と文につながっています。読みとしてはこれが一番自然です。
基礎力として、上記の3つをしっかり認識しておくことは大切です。しかし、それを読み進む英文できちんと捉えることが出来るようになるには「場数」が必要です。知識だけではほとんど意味がありません。知識が「読み」に活かすことができるように訓練しなければなりません。
編入試験の受験生は、なぜか文章の「構文」や構造分析、文法の解説、それに基づいているように見せかけた和訳が大好きです。こうすると「分かった」と思ったり「安心した」りするのですね。そういう私自身も面倒なときはこの方法を利用させてもらってきました。なぜなら教える側にとってこれほど便利な「教え方」はないからです。
しかし、これではほとんどの受講生の身になっていないことは事実です。
こういった基礎力を身につけるためには、自分が読んでいる英文のなかで不明な語なりについて、whenについてここで整理したように、まず自分で整理すべきです。その上で質問すれば、不明な点に焦点があたり、それを自覚してさらにいろいろな文を読んで確認してゆけば自然に身についてゆきます。
ただし、ここまで整理したようにやってみても意味が出てくるかどうかは別の要素も必要になります。よく言うのですが、英語を読む、というのは、全人的なアプローチが求められる作業なのです。
繰り返しになりますが、構文に当てはめたり、構造分解したりしても英文が読めるようにはなりません。では、なぜこれが日本で広くおこなれているかというと教える側にとって楽だからです。和訳もそうですが、これらは「麻薬」なのです。「常用」しないように注意が必要です。
日本人は英語を話すことが苦手だといいます。そして読むのは何とかなると。しかし、これは嘘っぱちだと私は思っています。英語を読める人より話せる日本人の方が圧倒的に多いと思います。それだけ、英語を『読む』(これは日本語で書かれた文章も同じ)という作業は一筋縄ではいかないものだと思っています。
なおここで取り上げた英文は、
Nature 427, 15-16 (1 January 2004) | doi:10.1038/427015a
'The hidden cost of health care'
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