何年も入試に取り組みながら、なかなか合格できない、あるいは合格にいつまで経ってもほど遠い人に共通するのは、「和訳」がないと勉強ができないということが多いように思われます。
これは、多くの人々が高校時代から和訳を渡されて英語の授業を受けてきたことが大きく影響しているのではないでしょうか。
2004年に『高校英語教育を変える和訳先渡し授業の試み』(三省堂)が出版され、1990年頃から蔓延っていた「ヤクを配る」ことが普通になっていたことにお済み付きを与え、訳を配るくらいしか生徒を引きつける方法を知らない、そして英語が読めない、英語を読まない(勉強しない)英語の教師を安心させました。
なにしろ、著者の金谷 憲氏は、中教審外国語専門部会(英語)の座長を務めた人物で、英語教師の研修の類いにしばしば顔を出す、英語教師には影響力のある人なのです。この本は、英語の授業の前に和訳を先に配り予習させたり、授業で和訳を先に読んで内容を把握させることを提唱しています。その理由が振るっています「英語を読む教師がほとんどいない」からだというのです。
確かに変わりました。英語の読めない大学生が多いのは昔からですが、いざ英語を勉強しようとしても自分ではどうにもやりようがない大学生が増加した、ということは事実だと思います。参考書でも、予備校の授業(テキストやプリント)でも和訳や解説であふれています。よく、和訳や解説なしにどう勉強するのか、ということを耳にします。最近はこういうことに疑問を持つ私の方が「おかしな奴」にされてしまっています(苦笑)。
結論を言えば、和訳や解説を求めている間は合格は遠い、ということです。またNatureやScienceなどのNews記事に目を通すことが日常化しない間は合格をたぐり寄せるのは難しいでしょう。また、その程度の英語力なくして医者になってどうなるのでしょうか?試験の設問内容からも、News記事だけでなく、論評についても読める人物を求めていることは明らかです。
5~10年計画で合格を目指すのであれば、解説や和訳を丁寧に読んで勉強するのも一案かもしれません(それでも私はそういう勉強法をすすめませんが)。1年~2年計画で突破しようという気持ちならば「原典主義」で行くべきです。簡単にいえば、自分の弱点が見えるので、勉強の効率が上がるからです。訳や解説を見て安心している間はいつまでも自分の弱点が曖昧になり、見えてきません。だから時間がかかるのです。当たり前といえば当たり前のことなのですが・・・。
最近、朝日新聞のベテラン記者という人が通信社の記事を「盗用」した事件が報道されていました。その人曰く、「(通信社の記事に)引きずられてしまった」とのこと。慣れた人ですらそうなのです。十分力のない受験生なら、他の人の作った解説、訳、解答に引きずられてしまうのは当たり前です。さらに困るのは、理解にむかうのではなく、理解は曖昧なまま、分かったつもりになり安心してしまう、という「引きずられる方」をすることです。
ついでに今一つ「多浪生(何年も合格を勝ち取れない人)」の特徴として、いつまでも「単語集」の類いを手放せない、ということがあります。どんな単語集でも訳語が限定されています。その訳語が頭に染みついてはとても英語などまともに読めません。嘘だと思う人は、書店のOxford BookwormやPenguine Readersのコーナーで、立ち読みして確認してください。それぞれのレベルがどのくらいの時間がかかるか。レベル3位でgive-upすることになるでしょう。
コメント